要点
- 連邦政府機関は最近、テレワークプログラムを縮小している
- ギャラップ社のデータによればテレワークは業績を改善し、人財も惹きつける
- 従業員がエンゲージしている組織は財務的な業績が最も良い
複数の連邦政府機関はテレワーク従業員の効果について、データ不足を理由にテレワークプログラムを縮小したと報告した。社会保障局のスポークスマン、マーク・ヒンドル氏は米紙ワシントンポストに「当局の現行サービス提供に関わる課題と公共サービス提供におけるテレワークの効果(当局のテレワーク政策)に関するデータ不足を鑑み、現在、在宅ワークを実験する段階にない」と語った。
また、2016年の米国会計検査院のレポートによれば「連邦政府機関のテレワークを支持する便益やコストについてのデータは少ない。選ばれた全ての機関はテレワークをサポートする便益についていくつか資料を提供したが、コストの資料を提供したのはたった2機関に過ぎない。」
ギャラップアナリティクスはこれに関するデータを有する。
データの内容は明白であった。テレワークはビジネスの結果や従業員のブランディングの改善のみならず、最も優秀な従業員が望む働き方である。
テレワークは浸透しつつある。
テレワークは増加している。オフィス以外で過ごす労働時間と労働者数は増えている。ギャラップ社の2012年のデータによれば、従業員の39%が同僚と離れて何らかの形でテレワークをしていた。2016年にはその割合は4ポイント増加の43%に達した。また、2012年から2016年の間、部分的にでもテレワークで働く人のテレワーク労働時間%も増加した。人事管理協会(Society for Human Resource Management (SHRM))によれば、 1996年から2016年の間でテレワーク制度がある会社数は3倍に達した。
色々な業種でテレワーク制度の採用が拡大している。ギャラップ社調査によれば、テレワークが最も増えた業種は金融、保険、不動産、次いで運輸、製造、建設及び小売であった。
オフィスで働く54%の人々はより柔軟な働き方ができる仕事があれば転職すると言っている。
リーダーやマネージャーはテレワークがより一般的となり、それを提供しない組織の方が珍しくなることに気づく必要がある。また、組織文化としてより柔軟な働き方を許容しない場合は通常オフィスで働く従業員自体をエンゲージし続けるのも時間と共に難しくなるであろう。
柔軟な働き方を提供し、テレワーク従業員をエンゲージすれば、パフォーマンスは向上する
エンゲージメントは従業員をハッピーにするものではなく、業績向上の戦略である。エンゲージしている従業員は確かにより熱意があり、エネルギッシュでポジティブなため、仕事と職場に対して前向きで、身体も健康である。とはいうものの、エンゲージメントはリーダーが分け与える特典でなく、KPIを改善する方法である。 ギャラップ社の十数年にわたる調査が示す通り、従業員がエンゲージしているとパフォーマンスは上昇する。エンゲージメントが高い職場では欠勤が41%低く、品質欠陥は40%少なく、利益は21%高い。
そして、仕事の働き方の柔軟性はエンゲージメントを高める。
ギャラップ社では従業員が一部テレワークで働き、そして同僚と一緒の場所で一部働く、という組み合わせがエンゲージメントを上昇させることを発見した。毎週、同僚やマネージャーと一緒に働くとエンゲージメントが影響を受けるようである。エンゲージメントの最適化されるのは従業員がオフィス外で60~80%つまり週5日制の場合、3~4日働く場合である。参考までに、2012年はこのテレワークの割合は20%弱であった。
ギャラップ社は全従業員のうち、この60%~80%の時間をテレワークで働くグループが 成長や関係性に関わるエンゲージメントのニーズが満たされていることに「非常にそう思う」と答える可能性が最も高いといえる。また、直感的にはそう思えないかもしれないが、このグループの従業員は仕事で自分のことを気遣ってくれている、自分の成長を支援し、成長について対話をしたということに「非常にそう思う」と答える可能性が全従業員中、最も可能性が高いといえる。さらにこのグループが全従業員中、職場に最高の友人がいる、仕事で学び、成長する機会があるに「非常にそう思う」と答える可能性が最も高いといえる。
このような調査結果により、リーダーは従業員がテレワークで働いてもエンゲージメントの低下を招かない、業績改善も望めることがわかる。また、調査は総じてテレワーク従業員の方がオフィスで働く従業員より生産的であることを示している。より高いエンゲージメントと生産性が示す通り、テレワークはリーダーにとって、最良のビジネス結果に結びつくのではないかということがいえる。
ビジネスの結果を見ても有意性がある。例えば、従業員500名の会社で従業員が週3日テレワークし、平均的なエンゲージメントレベルで生産性がテレワークにより5%上昇した場合、会社は従業員一人当たり3,000ドル削減できる。エンゲージしている場合、生産性上昇は平均15%であり、従業員一人当たり8,000ドル削減で、年間に換算すると4百万ドルに相当する。
はいえ、一部と全部テレワークする従業員、また職種により結果には差があり、柔軟な働き方を導入する場合、それらを計算に考慮する必要がある。
テレワークは環境にも影響を及ぼす
テレワークは環境にも影響があり、企業の社会的責任やESG(環境、社会、ガバナンス)プログラムを実施している組織にとってその施策に沿うものである。これに関係する要素は多く、複雑である。例えば、固形物の廃棄を課題としてあげた場合、自宅より会社にいる方が紙を多く使う傾向にある、電気利用の減少(オフィスにいる方が自宅より2倍の電気使用量である)、修繕にかかる大気汚染なども考慮する必要がでてくる。
企業の二酸化炭素排出量を測定する最も簡単な換算方法はマイル(1マイル=約1.61km)である。働く人が通勤のために運転をしない分、企業は環境を改善していることとする。例えば、サンマイクロシステムのオープン・ワークプログラムは米国従業員24,000人に在宅勤務を許可し、32,000メートルトンの二酸化炭素排出をその年には回避している。2015年、ゼロックスの報告によれば、テレワーク従業員は92百万マイル運転をしなかったため、二酸化炭素排出量を約41,000メートルトン減らすことができた。企業のリーダーはオフィスへ自動車通勤している従業員の環境に与える影響をギャラップ社のデータを利用して、推定することができる。2019年の一般的な通勤時間は30分弱で多くは1時間以内であった。ギャラップ社が記録しているこの10年間、この数値はほとんど変わっていない。
米国では多くの従業員が自分の会社の二酸化炭素排出量を気にしており、特に仕事に対して気まぐれなミレニアル世代には顕著である。 ギャラップ社の調査によれば、18歳から29歳の67%、そして 30歳から49歳の49%が、地球温暖化は人間が作った現実的で深刻な問題だ、と言っている。また、ギャラップ社レポートによればミレニアル世代の21%がこの1年間で職を変えた、自分の価値観にあった職に就きたいと思っている、ことが明らかになった。現在、働き手として大多数を占めるミレニアル世代を惹きつけ、会社に維持したい場合は、環境への影響を企業の価値として考慮するのが良いであろう。
世代・年齢を問わず、優秀な人材を惹きつけ、維持したい場合、リーダーは柔軟な働き方を提供することが重要である。
惹きつける、維持する、フレックスタイムの重要性について
職場の意識は変化しつつある。ギャラップ社の調査によれば、従業員のニーズを満たせない企業は労働市場で競争力が落ちるという発見がある。企業は現在雇用している従業員の維持にすら苦労するであろう。米国では離職率が過去最高となっている。ギャラップ社のデータによれば、従業員の51%は積極的に新しい仕事を探しているまたは転職を検討する用意がある。
さらに、偶然にも51%はフレックスタイムがある仕事であれば、転職すると言っている。
これらのデータは従業員の変化するニーズを現している。ギャラップアナリティクスによれば、最も優秀でエンゲージレベルが最も低い従業員が辞める可能性が高い。この従業員たちは職場に対しての期待が高く、 豊富な仕事の機会が他にもあるから、とギャラップ社のサイエンティストは説明している。
一方では、従業員の53%は新しい職の決定要因としてワークライフバランスと自身の健康を「非常に重要」としている。
ギャラップ社の「ミレニアルがどのように働き、生きたいか(原題: How Millennials Want to Work and Live)」のレポートは「ミレニアルは仕事のために自分の生き方を犠牲にしたくない」としている。ミレニアル世代は両方をうまく「融合できる」会社を探している。職場と女性についてのギャラップ社の調査によると、家庭にいる53%の母親は柔軟な働き方またはスケジュールを仕事に就くにあたって、「主要な要素」としている。そして、ワーキングマザーのわずか3分の1が必要時に自宅勤務を許容する会社に対して「うまくいっている 」と言っている。
リーダーが世代・年齢を問わず、優秀な人材を惹きつけ、維持したい場合は柔軟な働き方を提供することが重要である。
もちろん仕事を継続するか否かについて全ての従業員のニーズというのはあるが、 54%はテレワークの選択肢がある場合、転職を考えると言っている。この選択肢を与える企業は求職者の働きたい企業候補リストのトップに上がり、最も優秀な従業員を引き留めることもできる。
データのリーダーはテレワークについて意思決定が必要である
リーダーはエンゲージメントがビジネス上良い効果があると気づき始めると、テレワークによるコスト削減も増える一方である。 従業員の生産性は高まり、環境への悪影響は減少し、従業員に対してのブランディングも向上し、離職率は下がるため、全てコスト削減に結びつく。リーダーが仕事に対してのニーズを考慮する場合、テレワークの業績やコスト、顧客ニーズへの影響について、そして、財務的な業績はテレワークに関わらず、従業員がエンゲージしているか否かにかかっていることを理解する必要がある。テレワークの効果についてはデータがないと考えてはならない。テレワークを中止した政府機関をみても、多少のデータは存在し、テレワークを中止してから病欠や有給休暇の申請が増え、生産性は上昇せず、従業員の3分の2が退職を考慮したとのことである。
ギャラップ社はリーダーが意思決定に必要なデータ、テレワークを実施するにあたってどのデータを利用するべきかについてのデータを有する。ますますテレワークを希望する従業員は増えており、それを許容する組織も増えている。 何らかの理由でテレワークを提供しない会社は、提供する会社と働き手を奪い合う競争に巻き込まれることになる。逆にオフィスで働く従業員のニーズに応えてリターンがあまりないものに出費し、より低い生産性、結果としてより低いエンゲージメントを受け入れざるを得ないことになる。
特定の業種の特定リーダーによってはこれを受け入れることができるかもしれない。いずれにしても、テレワークを実施する前にリーダーはその意味合いについて理解する必要がある。
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